4.新信託法で認められた新しい信託の類型

新信託法で定められた新しい信託類型とその活用について、以下で御紹介します。

受益証券発行信託

新信託法では、信託行為に定めを置くことにより、受益権を表示する有価証券(受益証券)を発行することができるようになりました。これとともに、受益権原簿や、受益権譲渡の特例、受益証券に関する規定が整備されました。

限定責任信託

受託者の責任が信託財産に限定される信託のことを限定責任信託といいます。新信託法で新設されたものです。なお、この規定については、受託者責任が軽減される性質のものであることから、併せて、債権者保護のための規定についても整備されています。例えば、限定責任信託では、登記が要求されており、法務省令で定める方法により、算定される給付可能額を超えて受益者に信託利益の給付を行うことができません。受託者がこれに違反すると、原則として給付相当額を填補するなどの責任が課されます。

目的信託

目的信託はこれまで公益信託のみ認められていましたが、受益者の定めのない信託、いわゆる目的信託が許容されることになりました。ただし、目的信託の濫用を防止する観点から、自己信託による設定の禁止、期間制限の設定など、一定の濫用防止措置が設けられています。

自己信託

委託者が自ら受託者となるいわゆる自己信託が許容されることになりました。ただし、自己信託の濫用を防止する観点から債権者を害する目的で設定する自己信託(債権者詐害)などには、濫用防止措置が講じられています(他には、公正証書など一定の書面でなされるべきこと、強制執行の特則、施行の1年延期など)。

遺言代用信託

委託者の死亡時に受益権を取得する旨の定めのある信託が認められました。

後継ぎ遺贈型受益者連続信託

受益者の死亡により他の者が受益権を取得する旨の定めのある信託が認められました。